
05 BM助産師がきく!海外妊活体験談
今回は、【オーストラリアで不妊治療、そして出産】をされた、MIさんの体験談をお届けします。
Be Motherの助産師が、MIさんからお話をうかがいました。
オーストラリアでチャイルドケアのお仕事をしたり、その資格を取る勉強をしながら不妊治療を経験し、昨年出産したMIさんのストーリーをぜひご覧ください。
ー自己紹介をお願いいたします
夫の転勤に伴って2020年からオーストラリアに滞在しており、6年目です。
あと数年はオーストラリアにいることになりそうです。
2024年10月に出産し、もうすぐ4か月になる男の子と毎日楽しんでいます。
ーどのような経緯で、妊活を始められたのでしょうか?
私たち夫婦は、2021年3月頃から妊活を始めようと決め、その前に病気等がないか検査しておこうと、まずはオーストラリアの日系の病院で健康診断を受けました。
当時、私は29歳、夫は32歳でした。
その際、私の胸に腫瘍が見つかりました。
検査をして良性とのことでしたが、サイズが大きかったので念のために摘出して、ガンでないかの確認をしました。
結果、特に問題がなかったので7月頃から一年程自然妊娠を試みましたが、なかなか上手くいかず、早めに不妊治療の専門医にかかりました。
初診の予約をとるのに2-3か月待った記憶があります。
夫と私それぞれの検査をしたところ、夫側に妊娠しづらい問題があるという結果でした。
夫はショックだったようで、「ごめんね」と言われましたが、私側にも数値で出てないだけで、何かしら原因もあるかもしれないし、「二人で出来ることをやっていこう、その結果子どもに恵まれなくても二人で楽しく生きていこう」と話していました。その後の妊活、不妊治療にも前向きに取り組んでくれて、病院等も予定をやりくりして一緒にきてくれました。
サプリなど飲んで改善を試みたのちに、体外受精を勧められました。
ーその頃の心境を教えていただけますか?
正直、そんなにもすぐに体外受精を勧められると思っていなかったので、ショックでした。
また、その専門医があまり丁寧に説明してくれるタイプの人ではなく・・・。
オーストラリアだから日本と考え方が違うのかも!と疑い(笑)、一時帰国の際に婦人科に相談に行きました。
ただその時は長期滞在ができなかったので、望んでいたように相談や検査ができず、オーストラリアに戻ってきてから、別の専門医を受診しました。
結果、私たち夫婦に寄り添ってくれる専門医に出逢えて、まずは人工授精からトライすることにしました。
オーストラリアの医療制度では、GP(General Practitioner 一般開業医)からの紹介がないと専門医にかかることができないため、どちらもGPに勧められた専門医にかかりました。
最初の不妊治療専門医は、それまで通っていたオーストラリアのGPから勧められたところでした。2つ目は、言語面での不安や誤解を防ぎたかったので、まずは日本人のGPに変えました。
最初の病院での経緯を話し、家からそれ程遠くない場所にあること、
「丁寧に説明をしてほしい」と考えていることを伝えて、専門医を紹介してもらいました。
GPからの紹介状にも、「十分な説明と相談の上で、治療を進めていきたい」という希望を記載してもらいました。
ーしっかりと、セカンドオピニオンを受けられたんですね。
はい。ただ、夫の仕事の事情などでなかなか治療に取りかかれず、結局2023年の7月から人工授精に2回トライしましたが、良い結果とはなりませんでした。費用もかかるし、ダメだった時に結構精神的にこたえるので、その後少しでも確率の高い体外受精にステップアップすることに決めました。
当時、私はチャイルドケアで働く資格を取るための学校に通っていて、ちょうど実習が始まるタイミングでした。
スケジュールや気持ちの面で考えて、「実習が終わった後に体外受精を進める」という段取りをしていたのですが・・・、不思議なもので、そのタイミングで自然妊娠で息子が私たちのところに来てくれました!
ー妊活開始を決めてから、3年くらいかかったことになりますね。
妊娠を希望してから、実際に授かるまでの時間が長く、自然妊娠できると思ってなかったので、妊娠中は本当に無事に生まれてきてくれるのか、不安に思うこともありました。
大きな問題なく元気な赤ちゃんが生まれてきてくれて、初めて抱っこした時には、涙がでてくる程感動しました。
ー出産、そして産後はいかがでしたか?
出産はオーストラリアの公立の病院で、無痛分娩でした。
検診から当日まで、必要があれば無料で電話通訳をつけることができたり、助産師さんもいつも丁寧に接してくれて不満はほとんどありませんでした。
一つだけ辛かったのは、陣痛が始まってからなかなか入院ができなかったことです。
たまたま診察の日に陣痛が始まったので(10分間隔)、診察の際にその事を伝えたら、まだまだ子宮口が開いていないからと一旦帰宅するように言われました。
陣痛の間隔が2-3分になったら連絡することになっていたのですが、その日の病院が混んでいたからか、「その状態が2時間続いたらまた電話して」と言われ、なかなか病院に行かせてもらえなかったのです。陣痛が長びきすぎて、病院に行って部屋に入れてもらったときには疲れ切っていて、すぐに無痛分娩の薬をお願いしました。
ーそれは大変でしたね!
出産には、夫と、日本から手伝いに来てくれた私の母親に立ち合ってもらいました。
分娩室は結構広く、事前に何人まで立ち合い出来るか聞いたところ、「何人でもいいのよ!」と笑顔で返答してくれたことは印象的でした。
生まれた時、夫は喜びももちろんありましたが、それ以上に無事に生まれてきてくれた安堵感とこの子を育てていく責任感を感じた、と話していました。
私は感動と喜びでいっぱいで、そのあと病棟に移っても、疲れているはずなのにハイになっていて眠れませんでした。
また、海外あるあるだと思いますが、オーストラリアでも出産の翌日に、わずか1泊で退院となりました。
その後の赤ちゃんのお世話の事など不安でしたが、翌日には助産師さんが家に来てくれて、授乳指導や不安に思っていることには全て答えてくれました。
通常、来てくれるのは1日だけのようですが、授乳が上手くいっていなかったのと私が色々質問しすぎたのか(笑)、3日間も来てくれました。
その後も1週間、2週間、1か月と地域のセンターで助産師さんの検診を毎回1時間位受け、不安な事や疑問点を解消できました。
産後すぐの退院も、家でリラックスして過ごせて良かったのかなと思っています。
また、私の母親が出産予定日から3週間滞在し、帰国翌日から夫が育休を3ヶ月取得してくれました。
会社自体は6ヶ月まで取得可能でしたが、年明けのキリが良いタイミングで仕事復帰しました。
育休中は二人で初めての子育てを存分に味わえたと思います。
また、夫が子どもの世話に慣れてくれたので、育休後も週末に、夫に子どもを頼んで自分時間を作らせてもらうこともでき、助かっています。
寝不足がしんどかったり、上手くいかないこともありますが、驚くほどの速さで成長していく子どもの成長を見守りながら、子どもとの生活を存分に味わえている今がとっても幸せです。
ーつらさを感じるときに、相談する人はいましたか?
息子が生後5週の頃から、6週間、地域で開催されている両親学級に参加しました。
毎週テーマに沿って(睡眠、発達・遊び、離乳食、女性の健康・夫婦関係等)助産師さんが講義をしてくれたり、今の困りごとを聞いてくれたりと、近所に住む近い月齢の家族と出逢えたこと、情報共有できたこと、対面だからこそ小さな心配事でも気軽に助産師さんに相談できたこと、が非常に有意義でした。
既に子どもがいる友達が多く、出産前から日本に住む友達やオーストラリアで出会った先輩ママにも色々と教えてもらっていて、今までの出逢いに改めて感謝しているところです。
体力的にしんどい時は、夫に相談して数時間昼寝させてもらったり、家事を分担してもらったりしています。
今後、それでもしんどくなった際にはベビーシッター等を利用しようと思っています。
ー助産師訪問や産後の両親学級など、地域のサポート体制が整っていて素晴らしいですね。しかも、そこに馴染んでいらっしゃるのがすごい!
オーストラリアは他民族国家で、公的なサービスについては無料で通訳を付けることができ、とても助かっています。
両親学級は、毎回ではないものの、通訳さんが来てくれていました。
助産師検診の時も、念のため、ではありますが、電話で通訳を付けていました。
英語に関して言えば、オーストラリアに来る前に受けたTOEICは500点台でしたし、いまだに苦手意識があり、周りに頼っている部分もあります。
新型コロナウイルスの流行期間中に渡航したため、しばらくは自宅隔離となりました。
その期間にオンラインで語学学校に通い、一生懸命勉強したところ、3か月くらいで800点台に上がりました。
そこで、仕事をしてみようと思い、スタッフは日本人、お客さんはオーストラリア人という日系カフェや、日本人学校の補習校で働きました。
また、ローカルの学校でのボランティアも経験しました。
もともと1年か2年の予定でオーストラリアに来ましたが、長くいることになったおかげで、少しずつ行動範囲が広がり、結果的に馴染むことができているのかもしれません。
ーそうやって妊活をしながら、一方でご自身のキャリアのための勉強や準備を着々と進めていたということですよね。
日本では普通の会社員でしたが、もともと教員免許を取っていたり、子どもたちとキャンプなどの野外活動をするボランティアの経験があり、いずれは子どもとかかわることをしたいという想いがありました。
こちらに来て、いろいろなつながりから補習校やローカルの学校とのかかわりができ、英語の不安がありながらも、チャイルドケアの資格も取る1年間のコースを修了し、そして運よく現地のチャイルドケアで一年間働くことができました。
今は一年間の育休中で、育休後、同じ条件で戻れることになっています。オーストラリアに来る前には想像もしなかった展開になっています。
チャイルドケアのコースで学んだ事も子育てに生きていると思うと、このタイミングで子どもを授かったのも、親になる準備期間をもらっていたようだなあ、と思います。
ー最後に、これから海外で子育てする方たちへのアドバイスをいただけますか?
私自身は、心配性できちんとやろうとするタイプなのですが、「完璧を目指さない」ことが大事だと思います。
また、日本のやり方と海外のやり方の違いを感じることもあると思いますが、日本のコピーをする必要もないし、合わせる必要もないと思います。
気楽に「いいとこどり」をするくらいの気持ちでいるのがよいのではないでしょうか。
そして、ぜひ「自分自身、そして自分の時間を大事に」ということも心がけてほしいと思います。
オーストラリアの両親学級で知り合ったママたちは、生後間もない赤ちゃんがいても、夕方にバーに行く相談をしていて、日本との違いを実感しました。
自分自身がご機嫌で過ごせるように行動することが、家族の笑顔にも繋がるような気がします。
私自身、不妊治療を経験した人が身近に結構いて、気にかけてもらったことでかなり救われました。
また、いろいろな話を聞けたことで、不妊治療をするときに背中を押してもらったりもしたので、もしこの体験談がどこかでどなたかのお役に立てれば嬉しいです!

MIさんのオーストラリアでの不妊治療、出産、そして産後の貴重なお話をありがとうございました。
これからもBe Mother助産師がきく!シリーズでは、様々な海外体験談をうかがっていきます。
06
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